Armマイコン　STM32f446で作るダイレクトサンプリングSDRを455kHz IF周波数で使ってみる

評価項目、S/N比は?
　STMマイコンのA/D仕様は、12bit 1.5MSPS(@180MHzクロック)なので、現在使用中PCサウンドカード(16bit A/D)に比較してS/N比が低下します。
叉、IF周波数455kHzに設定すると、サンプリング周波数との比が少なく、サンプリングポイントのジッターなどがS/Nに大きく影響することも予想されます。
　これらの項目を確認するのに、まずは7MHz受信機として、S/Nはどうなのかを、LA1600のフロントエンド部とIF AMPを製作して評価してみます。

　 評価1

「ArmマイコンでつくるダイレクトサンプリングSDR」では、中波帯をアンダ―サンプリングでカバーしていますが、SDR#4号機ではIF周波数455kHz固定 なので、周波数をNHK第一から455kHzに変更、STM A/D入力に455kHz信号を入力し、D/A出力にAF PWR AMPを接続して実際にSPで聴いてみます。 比較のため、LA1600のIF入力(7ピン)した時の復調出力と比較します。 　周波数変更の方法については、トラ技2021 D/Lページへで変更出来ました。 　左図は、テスト回路(クリックで拡大)。STMへの電源供給は当初、USB経由で供給していましたが、パルス性のノイズが乗っていたため、外部供給に 切り変えています。切り替え方法はボードのユーザーマニアルに記述されています。 　他、D/A出力に簡単なLPF(-1.4db @3k)を追加しています。

特性評価1
　

項目	STM	LA1600	備考
ノイズ出力	6mVrms	0.8mVrms	入力端子GND
S+N/N	60dbu(EMF)	32dbu(EMF)	S/N比　10dbとなるIF入力レベル　SG 455kHz 1kHz30%AM

補足説明
　STMのノイズ出力は、当初A/Dの+/-3LSB(約6mVpp)程度想定に対してやや大きく、入力信号の大小に関わらず一定のノイズ量を伴うので、 静かな受信音とはならず、今後の検討課題になります。
　

評価2

評価1では455kHz SG信号を使用しましたが、実際の7MHzでは外来ノイズも大きく、STMのA/Dノイズはどのように影響するのか、LA1600を使用した7M>455kHzのフロントエンドと、 MC1590を使用したIF AMPを追加して、LA1600単体で受信した場合と比較してみました。 　455kHzのトランスはあり合わせのIFTを使い、MC1590 IF AMPはLA1600とのIF Gain差を補正する目的で30-50db程ゲイン調整しています。D/A出力には評価1よりも LPFを追加し2段にしています。 　左図は、テスト回路(クリックで拡大)。

　 受信してみて
　アンテナはフルサイズエンドフェッドアンテナ、5月下旬の夜間7.3MHz付近の北京放送を受信してみました。STM受信とLA1600受信を切り替えています。 フロントエンドは両者共通。
LA1600とSTM32での受信デモ動画　(YOUTUBEへ)
　 信号が強い場合は、両者とも同じようなS/Nで聴こえていますが、信号が弱くなるとSTMの方がA/Dノイズが目立ってきます。復調の音質はSTMの方はLPFを追加している分 やや高域がカットされていますが、女性アナの音声に対してはほぼ実用範囲です。
　途中シンクロ画面に切り替わりますが、STM A/D入力レベルを表示しています。波形は1.5-2Vpp程度を示しているので、受信機として構成する場合は、この位のレベルを 確保する必要があり、IF AMPのAGC特性が重要課題となりそうです。
　A/Dノイズは今後の検討で改善していくとして、まずはSTMを使ったSDR#4を進めていけそうです。

今後の進め方
　STMマイコンについては、開発環境やプログラムに慣れる必要があり、まずは"Lチカ"からスタートです。

　　 Top Menu